巨匠・天野 喜孝に聴く。
「描く幸せ」に託した想いとは
天野喜孝氏が描く幻想的で耽美（たんび）な作風に魅せられ、熱烈なラブコールを送ったミラノコレクション。「描く幸せ」をテーマに、ミラノコレクションの象徴である天使を描き下ろしていただきました。描かれた天使は、見る人を包み込むような優しい色使いもあいまって、息をのむ美しさです。天野氏はこの“ミラコレ天使”に、どのような想いを託したのでしょうか。制作秘話とともに天野氏に伺いました。
天野 喜孝
アニメのキャラクターデザインやゲームのイラストレーションでも世界的に知られる、日本のアーティスト。幻想的な作品は海外でも人気を博す。
「描く幸せ」とは、顔を描く＝お化粧する幸せ
私のようなアーティスト・画家にとって「描く幸せ」は、“絵を描く幸せ”なんですね。一方、女性にとっての「描く幸せ」とは“顔を描く幸せ”、つまりお化粧をする幸せに紐付けられるのではないかと思います。眉メイクをすることを「眉を描く」と言います。もしかしたら女性にとってのお化粧は日常のことで、ことさら幸せを感じる行為ではないかもしれません。ただ幸せとはまさにそんな何の変哲もない日常のなかにこそ存在します。ミラノコレクションを使い、改めてお化粧という「描く幸せ」を感じてもらえたら嬉しいですね。
私が描いた天使を非常に繊細に表現していただき、素晴らしい出来だと思いました。パウダーが細かいからこそできる造形ですよね。私が描いた絵は2次元のものですが、実際に3次元の存在として見事に構築されています。コンパクトも上品で、天使との相乗効果が発揮されていると感じました。
“ミラコレ天使”のイメージはマリア様
これまでの天使は、いずれも可愛らしい子どもの天使たちでした。ただあるとき、「大人の天使を描いても面白いのでは？」と、ふと思ったんですね。その着想から、大人のマリア様は描く機会が少なかったこともあり「チャレンジしてみたい」と思い、今回は子どもの天使とともに、私のなかのマリア様のイメージで“ミラコレ天使”を大きく描かせていただきました。
マリア様のような天使の慈愛を表現するために、赤色およびピンク色を使って、朝日や黄昏時のような儚さを表現しました。普段あまり赤色は使わないため、マネージャーに「赤色にしていいかな。どうだろう？」と相談したくらい、赤色の使い方は悩みましたね。また“青色”を一部使用しているのも、マリア様のイメージからです。
絵に映る世界の外側まで想像してほしい
私が描いたのは、朝日あるいは黄昏時の雲の上にいる、天使たちです。また今回の「描く幸せ」というテーマから、“ミラコレ天使”は何かを描いている様子を描写しました。
ただ、私が原画で描いたのはあくまで天使たちの世界の一部です。私が描かなかった絵の外側の世界がどうなっているのか。また“ミラコレ天使”が誰に向けて何を描いているのか。天使はどこから来たのか……などなど、ぜひ絵に映る世界と外側の世界、両方を自由に想像していただけたら、作者としては嬉しいですね。
ミラノコレクションで描く幸せを感じてほしい
個人的にコンパクトを含む箱が大好きなんですね。箱好きが高じて、過去には京都の箱屋さんにつくっていただいた箱に私が絵を描く、なんて作品を制作したことがあります。
また箱と言えば、ギリシャ神話に登場する、パンドラが好奇心から開けてしまったという「パンドラの箱」が有名です。パンドラの箱しかり、あらゆる箱には「開けたときにどんな世界が広がるのだろう」というワクワク感と、「なかにある世界を自分のものにできる」という独占欲を満たす機能がありますよね。
ミラノコレクションの高いデザイン性を持つコンパクトも、そんな開ける人に希望と欲を満たしてくれる存在と捉えられるのではないでしょうか。
ぜひミラノコレクションを使って、描く幸せを感じていただけたら嬉しいですね。
――まるでこのコンパクトも宝石箱みたいに綺麗ですね。ぜひみなさんにも手に取っていただきたいですね。
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